再資源化困難だったFRPを塗り壁材へ LIXILが目指すマテリアルリサイクルの未来

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(写真左から)左官職人 久住有生氏、LIXIL 環境技術開発部 中瀬敬仁
優れた防水性と耐久性を持ち、浴槽などの素材として広く使われているFRP(繊維強化プラスチック)。その便利さの反面、樹脂にガラス繊維などを組み合わせた複合素材のためリサイクルが難しく、その多くが埋め立てや焼却処分されているのが現状です。FRPのマテリアルサイクルの可能性を探ってきたLIXILはこのたび、FRPを塗り壁材にリサイクルする新技術の開発に成功しました。開発した塗り壁材は、4月17日にLIXILの文化施設INAXライブミュージアム内にオープンする「トイレの文化館」の壁として生まれ変わることに。今回の技術が誕生するまでの過程や、新素材の工芸的な価値について、左官職人の久住有生氏とLIXIL 環境技術開発部 中瀬敬仁に伺います。
長らく業界の課題だったFRPの再資源化――LIXILとしてFRPの再資源化にこだわった理由を教えてください。
中瀬:LIXILは環境配慮技術の開発に注力をしています。金属や汎用的なプラスチックはリサイクルの手法が確立されていますが、FRPはリサイクルの処理が難しくチャレンジする価値のあるテーマだと考え、社として力を入れています。私の所属する環境技術開発部では、FRPの再資源化をはじめとするいろいろな環境技術を研究しています。

――FRPのマテリアルサイクルにより、どのような課題が解決されるのでしょうか?
中瀬:現状、使用済みとなったFRP製の浴槽は大半が埋め立てや焼却処分されており、一部がセメントの原料としてリサイクルされています。今回我々が開発した手法は、樹脂を高温で炭化させて塗り壁材にリサイクルするので、CO₂の排出を大幅に抑え、資源として有効活用することができます。
――今回のリサイクルの手順について教えてください。
中瀬:今回の原料は当社の工場から出た成形不良のFRP製浴槽を使用しています。それらを40センチぐらいの大きさに切断して破砕機に入れ、細かい破片にします。その破片を700度で炭化した後、粉末状に砕いて塗り壁材の原料の一部として再利用しています。
――FRPのリサイクルを実現するにあたって、苦労した点があれば教えてください。
中瀬:FRPは耐熱性が高いので、焼いて炭化させる工程には苦労しました。初めのうちは炭にならず生焼けのまま出てきてしまうなど上手くいきませんでした。温度や時間、酸素濃度などの条件を細かく処理したところ、炭化することができました。
――FRPのリサイクルについては、業界の中でも大きな課題となっているのでしょうか?
中瀬:世界的にも問題視されていて、ドイツなどではFRPの埋め立て処分が禁止されています。リサイクルとしてはセメントの原料にする方法が主流ですが、FRPの素材の2割ほどは燃えてしまいCO₂が発生します。我々の手法であればCO₂の発生を最小限に抑え、塗り壁材などの素材として再利用することができます。
自然の美しさを壁の造形に取り込む
――今回、左官職人の久住さんに仕事を依頼した経緯を教えてください。
中瀬:FRPを炭化させ粉末にすることに成功したまではよかったのですが、明確な用途が見つからずに困っていました。成分を調べるとしっくい壁の組成に似ていることがわかり使えるかもしれないと思いましたが、自社製品にはないことから知見も少なく困っていました。そんな中、私の拠点からも近いINAXライブミュージアムの「土・どろんこ館」のことを思い出し相談に向かったところ、久住さんを紹介してもらい、計画中だった「トイレの文化館」に施工してもらうことで話がまとまりました。
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――では久住さんに伺います。今回、FRPを塗り壁材にマテリアルリサイクルした取り組みについて、左官職人としての感想を教えてください。
久住:僕らのものづくりの仕事は基本的にゴミを出すので、できればゴミを出さずに、長持ちする作品をつくりたいという想いがあります。FRPは強度があって防水性も高く長持ちする工業製品ですが、リサイクルが難しい素材でもあります。いろいろな現場に入る中で、廃棄に苦労している業者さんを見てきましたし、僕らも型取りでFRPを使うことがあります。焼却や埋めることでしか処分できないFRPを大量に生産して、その後はどうするのか不安に感じる気持ちもあったので、今回のLIXILさんの取り組みには可能性を感じます。
僕らは普段、塗り壁材として漆喰を使っています。漆喰は消石灰と麻の繊維と海藻のりが主原料で、リサイクルしやすいものです。今回のFRPのリサイクルにより、漆喰に代わる新しい塗り壁材ができるかもしれないと期待しています。
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中瀬:我々が炭化した黒い粉末を久住さんに提供したところ、数十種類の塗り壁材サンプルをつくっていただきました。真っ白なプレーンなものから茶系のもの、つぶつぶのある質感のものなど、あの黒い粉からよくこれだけのバリエーションを出せるものだと驚きました。
――FRPをリサイクルした塗り壁材には、デザイン面でどのようなメリットがありますか?
久住:漆喰はもともと真っ白なので、色付けするときに炭や黒い顔料を入れますが、強度が落ちるというデメリットがあります。また、紫外線や雨の影響を数十年という長期間受けることで、分離して白く戻ってしまいます。今回の塗り壁材は何も混ぜることなく乾燥すると濃いグレーになるので、強度を落とさずに新しい壁のデザインに活かせるかと思います。
――久住さんは具体的に「トイレの文化館」のどの壁面に携わっているのでしょうか? また、施工にあたりこだわった点を教えてください。
久住:トイレの文化館は1階がRC(鉄筋コンクリート)で、2階が木造の建物ですが、1階から2階に上がる階段の吹き抜けの壁の仕上げを担当しています。1枚の大きな壁なので事前に下地をつくり、材料の調合などをして作業自体は1日で仕上げます。壁を塗る動作で表情をつけたいので、その動作を中断することなく上から下まで一気に完成させます。
僕は普段から、自然素材を用いて自然界の美しさを壁の造形に取り入れたいと考えています。人間が自然を美しいと感じるのは地球を守るための本能だと思いますし、その美しさを壁に残すべく作品づくりに励んでいます。
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廃棄されるだけのゴミを価値のある資源に
――久住さんとLIXILの最初の接点を教えてください。
久住:今から20年ほど前になりますが、INAXライブミュージアムから依頼をいただき、「土・どろんこ館」の壁を手がけたのが最初です。そこからの長いお付き合いで、僕らとしては新しいことにチャレンジさせてもらいながら、LIXILさんからはタイルや陶器についていろいろなことを教えていただきました。その後、同じライブミュージアムの「建築陶器のはじまり館」にも携わり、ミュージアムのグランドオープン10周年記念で開催されたガウディの特別展にも参加しています。以前、館長を務めていた辻孝二郎さんのもとで、本当にのびのびと自由に仕事ができたので、僕らにとってはすごく思い入れのある企業です。
――久住さんがLIXILに期待することを教えてください。
久住:僕はこれまで学校や病院、老人ホームなどの壁を手がけてきましたが、最初は自然素材の壁を提案しても大抵は「前例がないから駄目」という判断を下されます。学校などはその傾向が強く、土壁をつくることが決まっても建設会社から反対されたり、「土壁はボロボロ剥がれる」「子どもが触ったら危ないのではないか?」といった声が届いたりします。彼らが望むのはツルツルした素材で壊れにくく、簡単に替えが効く素材です。でも、僕としては子どものうちから「人間は自然の一部」だと感じることが大事だと思うので、特に都市部ではそういったチャレンジを続けて、自然素材の良さを自分なりに伝えてきたつもりです。
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INAXライブミュージアムにはフランク・ロイド・ライトが設計した帝国ホテル旧本館の柱や、世界各地の装飾タイルなど、国内外の優れた工業製品が展示されています。僕も職人として古い文化財を修復しながら次の世代に引き継いでいくことを目指しているので、LIXILさんには長く愛されて、後世まで残るような製品を生み出していってほしいと考えています。
――では最後に、FRPのマテリアルリサイクルにおける今後の展望を教えてください。
中瀬:現在、弊社の工場から出るFRPの廃材については、ほぼ埋め立てをすることなく、100%に近いリサイクル率を実現しています。さらにサーマルリサイクルを減らして再資源化率を高めるために、廃棄された電線の被覆材である塩化ビニールとFRP廃材の破片を混ぜて、太陽光パネルの下の防草シートにマテリアルリサイクルする取り組みも進めています。しかし、製品として出荷され廃棄されたFRPの大半は埋め立てられています。FRPの浴槽には金属が埋め込まれていたり、異素材と結合していたりするものも多く、リサイクルには膨大なコストがかかるので、製品化は難しいのが現状です。
FRPは軽くて強度に優れた素材ではありますが、どうしても最終処分が難しいという問題を抱えています。埋め立て処分されるFRPをいかに減らして、価値のある資源に変えていくか。FRPに代わる新素材の開発も含め、さまざまな試行錯誤を続けていきます。
LIXILでは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というパーパス(存在意義)の達成に向け、常に新しいことにチャレンジしています。これまでの枠にとらわれない斬新な発想、そしてさまざまなバックグラウンドを持つ従業員の多様な視点や協業者とのコラボレーションから生まれる新たな価値-このようなことを大切にし、イノベーションを創発していくことで暮らしの未来を創造していきます。
LIXILは今後も、私たちの行動指針LIXIL Behaviorsの一つにある「実験し、学ぶ」企業文化を醸成し、“やってみよう”と仲間が背中を押してくれる環境を整えてまいります。
インパクト(サステナビリティ)イノベーション
再利用困難的FRP作爲塗料材料,LIXIL所追求的材料回收的未來

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(照片從左至右)左官工匠久住有生,LIXIL環境技術開發部中瀨敬仁
FRP(纖維增強塑料)具有優良的防水性和耐久性,廣泛用於浴缸等材料。儘管它非常方便,但由於這是將樹脂與玻璃纖維等組合在一起的複合材料,回收利用相對困難,目前有很多被填埋或焚燒處理。LIXIL一直在探尋FRP的材料循環可能性,這次成功開發了將FRP回收爲塗壁材料的新技術。開發的塗壁材料將於4月17日在LIXIL的文化設施INAX直播博物館內重新利用於「廁所文化館」的牆面。在此次技術產生之前的過程,以及新材料在工藝上的價值,我們將詢問左官工匠久住有生先生和LIXIL環境技術開發部的中瀬敬仁。
長期以來,業界面臨的挑戰是FRP的再資源化。
——請告訴我們LIXIL堅持FRP再資源化的理由。
中瀨:LIXIL專注於環保技術的開發。金屬和通用塑料的回收方法已經確立,但FRP的回收處理較爲困難,我們認爲值得挑戰,因此公司對此非常重視。我所在的環境技術開發部研究各種環保技術,以FRP的再資源化爲起點。

——FRP的材料循環能解決哪些問題?
中瀨:目前,廢棄的FRP浴缸大多數被填埋或焚燒處理,部分被作爲水泥原料回收。這次我們開發的技術是將樹脂在高溫下碳化,回收成塗壁材料,從而大幅降低CO₂的排放,有效利用資源。
——請告訴我們此次回收的步驟。
中瀬:此次的原材料使用的是我們工廠生產的成型不良的FRP浴缸。將它們切割成大約40厘米的大小,放入破碎機中,製成細小的碎片。然後在700度下炭化這些碎片,之後再粉碎成粉末,作爲塗牆材料的原料之一進行再利用。
——在實現FRP的回收過程中,如果遇到困難,請告訴我們。
中瀬:FRP具有很高的耐熱性,所以在燒烤炭化的過程中遇到了困難。最初炭化不成功,出來時還是半生不熟。經過對溫度、時間、氧氣濃度等條件的細緻處理後,成功實現了炭化。
——FRP的回收在行業中也是一個很大的課題嗎?
中瀬:這在全球範圍內也被視爲問題,在德國等國家禁止將FRP填埋處理。回收方面,主要的方法是將其作爲水泥的原料,但約20%的FRP材料會燃燒,產生CO₂。我們的方法可以將CO₂的產生降到最低,作爲塗牆材料等進行再利用。
將自然之美融入牆體造型
——這次,請告訴我們委託左官工匠久住的經過。
中瀬:成功將FRP炭化成粉末的階段很好,但我遇到了找不到明確用途的困擾。經過成分分析發現,它的成分與石膏牆的組成相似,我認爲可能可以使用,但由於自家產品中沒有相關信息,因此了解也很少而感到困惑。在這種情況下,我想起了離我基地較近的INAX生活博物館的「土·泥巴館」,於是前去諮詢,得到了久住的介紹,並決定在計劃中的「廁所文化館」中進行施工。
――那我來問一下久住先生。請您談談這次將FRP作爲塗抹壁材進行材料回收的嘗試,作爲抹灰工人的感想。
久住:我們的製造工作基本上會產生垃圾,因此我希望能夠沒有垃圾,並製作出持久的作品。FRP是一種強度高、防水性好並且耐久的工業產品,但也是一種難以回收的材料。在參與到各種現場的過程中,我看到了許多在廢棄處理上苦苦掙扎的承包商,我們也會在制模中使用FRP。大量生產只能通過焚燒或填埋來處理的FRP,讓我對後續的處置感到擔憂,因此我對本次LIXIL的嘗試感到很有潛力。
我們平時作爲塗抹壁材使用的是石灰泥。石灰泥的主要原料是消石灰、麻纖維和海藻膠,易於回收。這次FRP的回收或許能創造出替代石灰泥的新塗抹壁材,我對此表示期待。
中瀬:我們提供給久住先生炭化後的黑色粉末,他製作了數十種塗抹壁材樣品。從純白色的到茶色的,再到有顆粒質感的各種樣品,我很驚訝能從那黑色粉末中創造出如此多的變體。
――使用回收的FRP製作的塗抹壁材在設計方面有哪些優勢呢?
久住:石灰泥本身是純白色的,着色時需要加入炭或黑色顏料,但這會降低強度。此外,經過數十年的紫外線和雨水影響,會導致分離並變回白色。這次的塗抹壁材在乾燥時不添加任何混合物就會變成深灰色,能在不降低強度的情況下應用於新的牆面設計。
――久住先生具體負責「廁所文化館」的哪面牆?此外,請告訴我在施工時特別注意的點。
久住:廁所文化館一層爲RC(鋼筋混凝土),二層爲木結構建築,但我負責一層到二層的樓梯中庭牆面處理。這是一面大的牆,所以要事先做好基層,調和材料,整個工作在一天內完成。爲了在塗牆過程中表現出表情,我不想中斷這個動作,而是希望從上到下一次性完成。
我一直在考慮用自然材料將自然界的美融入牆面造型。我認爲人類之所以感到自然美是出於保護地球的本能,因此我努力創作作品,力求將這種美留在牆上。
將僅僅被廢棄的垃圾轉化爲有價值的資源
――請告訴我久住先生與LIXIL的第一次接觸。
久住:大約在20年前,我收到來自INAX現場博物館的委託,負責「土・泥土館」的牆面,這是最初的合作。從那時起,我開始和LIXIL保持長期的合作關係,在這個過程中我們能夠嘗試新的挑戰,LIXIL也教給我們關於瓷磚和陶器的各種知識。之後,我還參與了同一現場博物館的「建築陶器的起源館」,並參加了爲博物館首次開放10週年慶典舉行的高迪特展。在之前擔任館長的辻孝二郎先生的引導下,我能非常自由地進行工作,因此對我們來說,這是一家很有感情的企業。
――請告訴我久住先生對LIXIL的期待。
久住:我之前在學校、醫院、養老院等牆壁的施工上有過很多經驗,但一開始即使提議使用自然材料的牆壁,通常也會被判斷爲「沒有前例,所以不行」。學校等場所的這種傾向尤其明顯,即使決定要建土牆,施工公司也會持反對意見,或者會有人說:「土牆會脫落」、「兒童觸碰會危險?」他們期望的是光滑且不易破損、容易更換的材料。然而,我認爲讓孩子們從小感受到「人類是自然的一部分」是非常重要的,尤其是在城市中,我一直在繼續這樣的挑戰,努力以自己的方式傳達自然材料的優點。
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INAX直播博物館展示了由弗蘭克·勞埃德·賴特設計的帝國酒店舊本館的柱子,以及來自世界各地的裝飾瓷磚等國內外優秀的工業產品。作爲一名工匠,我也致力於在修復古老文化遺產的同時將其傳承給下一代,因此我希望LIXIL能夠創造出受到長久喜愛並傳承至後世的產品。
——最後,請告訴我FRP材料回收的未來展望。
中瀨:目前,我們公司工廠產生的FRP廢料幾乎沒有填埋,達到了接近100%的回收率。此外,爲了減少熱回收,提高再資源化率,我們還在進行將廢棄電線的包覆材料——氯化聚氯乙烯與FRP廢料碎片混合的嘗試,以材料回收於太陽能電池板下的防草布。然而,作爲產品出貨後被廢棄的FRP大部分仍然是被填埋處理。FRP浴缸中埋有金屬,或與其他材料結合在一起的情況較多,回收成本巨大,因此產品化目前比較困難。
FRP是一種輕便且強度優異的材料,但也面臨最終處理困難的問題。如何減少填埋處理的FRP,轉化爲有價值的資源,包括開發FRP替代的新材料,我們將持續進行各種嘗試和探索。
LIXIL堅持「讓全世界每個人都渴望實現富裕舒適的居住環境」的使命(存在意義),不斷挑戰新事物。我們珍視不拘一格的獨特發想,以及擁有多元背景的員工多樣視角和與合作伙伴的協作帶來的新價值,通過創造創新來塑造未來的生活。
LIXIL今後也將繼續營造一種企業文化,即行爲準則之一的「實驗與課堂」,創造一個能夠讓同伴鼓勵「去試試」的環境。
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