■筑波精工<6596>の中長期の展望
1. EV車の今後の課題(航続距離)と解決策
過去数年間、中国と欧米を中心に自動車のEV化は加速度的に進んだが、足元ではその伸び率が鈍化している。ここで指摘されている課題の一つが「航続距離」、すなわち1回の充電で走行出来る距離が短いことだ。特に冬場は、より多くの電気を暖房用に消費するため、充電ステーションに長蛇の列が出来ている。これが最近の「EV離れ」の要因の一つとなっている。
(1) 航続距離が短い主要因はインバータの発熱
一般的なEV車(大衆車)の航続距離が短い主要因は、インバータの発熱にある。EV車では、バッテリーのDC電力をACに変換しモーターを回すが、この役割を果たすのがインバータで、変換時の発熱が電力損失を生んでいる。今後EV車の航続距離を伸ばすためには、インバータでの電力損失を極力抑えることが必須条件となる。
(2) 二つの解決策:SiC基板か極薄Si基板
同社によれば、このインバータでの熱損失を抑える方法は、現時点においては主に二つあるとのこと。一つはSiC(シリコンカーバイド)基板を使うことだが、SiC基板は量的な供給が限られていることから非常に高額であり、限られた一部の高級車にのみ搭載できる。一般大衆車への搭載はコスト面から難しい。
一方でSi基板(通常のシリコンウエハ)は安価で大量供給が可能だが、熱損失を抑えるためには厚みを80μm厚(可能なら60μm厚)以下にすることが必要だ。しかし量産ラインにおいては80μm厚以下のウエハの取り扱いが非常に難しく、通常の「接着剤方式」は使えない。そこで、どうしても同社の「静電チャック方式」が必要となってくる。
注:上記は取材に基づいた同社の説明による
2. 潜在市場の推測
上記のような事業環境から、同社の先行きは楽しみでもある。しかしウエハの薄型化が進むためには、まだ乗り越えるべき課題・壁も多い。当初、同社によるとEV向けにウエハの薄型化が進むのは2024年3月期以降としていたが、実際は2~3年ほど遅れる気配である。したがって、同社の業績が本格的に浮上するのも2026年3月期からと予想される。
では今後、潜在的な市場はどの程度あるのだろうか。同社の説明によると、従来、薄型IGBT生産の主力は6インチウエハであったが、2023年秋から8インチウエハで80μが本格的に稼働し、一部では12インチが立ち上がりつつあるようだ。12インチウエハ1枚からは自動車約3台分のIGBTが取れると言う。したがって今後のEV自動車生産予測から、同社では12インチウエハ用「Supporter」の需要については、遅くとも2027年3月期に7,000枚/年になると見ているようだ。
「Supporter」の価格は正式には開示されていないが、取材に対して会社は「12インチウエハ用で1枚数千米ドルのレベル」と述べている。仮にこの価格を3千米ドル、1米ドルを150円とすると、2027年3月期の「Supporter」の売上高は、7,000×3,000×150=3,150百万円※となる可能性がある。
※これらの数字は弊社推測によるもので、同社から正式に発表された数字ではない。
同社によれば、既に12インチ月産15万枚を準備している顧客がいるとのことで、事実2024年3月期には12インチ量産用の自動機を販売した。12インチの保持材については、同社の「Supporter」以外に今のところ競合する製品は見当たらない、とのことである。今後は8インチでの同社製品の採用増とともに、12インチへの展開も注視する必要がある。
3. もう1つの潜在市場(MOSFET用)とIGBTの広がり
同社製品(主に「Supporter」)に対して、もう1つ大きな市場として期待されるのがMOSFET用だ。現在、自動車用と携帯電話用バッテリーの大容量化が進んでおり、これらのバッテリーにおいては高速(短時間)での充電が求められている。そのためには、高電圧をかける必要があり、これに耐えられるMOSFET半導体が必須部品となる。MOSFET半導体の厚さは約100μであるが、デバイスメーカーとしては少しでも生産効率を上げるために8インチウエハでの生産を標準としている。その生産工程ではウエハの「反り」が大きな問題となるが、これに対応できるのが同社の「Supporter」である。
同社ではMOSFET用としての「Supporter」の需要は2025年3月期には約1,500枚/年に達すると見ている。IGBT用と並んで楽しみな市場である。MOSFET用(8インチ用)の価格は、IGBT用(12インチ用)よりは低いと予想されるが、将来の売上高は年間200~300百万円に上る可能性があると弊社では見ている。
また最近では、薄型IGBT市場が広がってきている点も注目だ。現在、最も需要が期待されているのがEV自動車なのは言うまでもないが、近年では風力発電用、家電用にも需要が広がっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
■筑波精工<6596>中長期展望
1. EV汽車未來的問題(續航里程)和解決方案
在過去的幾年裏,以中國和歐美爲中心的汽車電動化得到了加速發展,但現在增長率正在放緩。其中一個問題是“續航里程”,即一次充電行駛的距離短。特別是在冬季,由於需要更多的電力供暖,充電站前會排長隊。這是最近“EV離開”的原因之一。
(1)續航里程短的主要原因是逆變器的散熱
一般EV汽車(大衆車)的續航里程短的主要原因是逆變器的散熱。在EV汽車中,DC電能通過電池轉換爲交流電,並驅動電機,逆變器負責這項工作,但這種轉換會造成熱量的損失。爲了提高EV汽車的續航里程,必須儘可能減少逆變器中的能量損失。
(2)兩個解決方案:SiC襯底和極薄的Si襯底
該公司表示,目前有兩種主要方法可以減少逆變器中的熱損失。其中一種是使用SiC(碳化硅)襯底,但由於SiC襯底的數量供應有限,因此非常昂貴,並且只能在少數高端汽車中使用。這種方法對於大衆汽車來說成本太高了。
另一方面,Si襯底(通常的硅片)成本較低且可大量供應,但爲了降低熱損失,必須將其厚度減小到80μm以下(如果可能,則減小到60μm以下)。但是,在生產線上處理80μm以下的硅片非常困難,通常的“粘合劑方法”不可行。因此,必須使用am該公司的“靜電夾持法”。
注:上述內容基於公司提供的信息。
2. 潛在市場的推測
基於上述業務環境,該公司的未來前景也令人興奮。但是,爲了使晶片更薄,還有許多問題和障礙需要克服。最初,該公司表示向EV提供薄晶片將在2024年3月期以後進行,但實際上可能要延遲大約2到3年。因此,預計該公司的業績將從2026年3月開始真正增長。
那麼未來可能有多大的潛在市場呢?據該公司介紹,到目前爲止,薄型IGBT生產的主力是6英寸晶圓,但從2023年秋季開始,8英寸晶圓的80μ正式開始運轉,部分已開始運行12英寸晶圓。據說可以取出大約3臺汽車的IGBT。因此,從未來的EV汽車生產預測來看,該公司認爲,在2027年3月期之前,12英寸晶圓用的“支撐器”市場需求將達到7,000枚/年。
“支撐器”的價格尚未正式公佈,但該公司表示:“針對12英寸晶圓,每片價格在幾千美元左右。”如果假定價格爲3千美元,1美元等於150日元,則2027年3月期的“支撐器”銷售額有可能達到7,000×3,000×150=3,150百萬日元。
這些數字是通過本公司的估計得出的,而不是公司提供的正式數字。
該公司表示,已經有客戶準備好了每月生產15萬張12英寸晶圓,並在實際上已經於2024年3月出售了12英寸量產自動機。除了該公司的“支撐器”外,現階段還沒有競爭產品可用於維持12英寸保持材料。未來還需要注意8英寸產品的採用增加和開拓12英寸市場。
3.另一個潛在市場(MOSFET)和IGBT的擴展
同公司的產品(主要是“支撐器”)還有一個巨大市場可以期待,那就是MOSFET的市場。目前,自動汽車和手機電池的大容量化已經趨於成熟,而在這些電池中,需要耐受高電壓的MOSFET半導體,這成爲必需品。 MOSFET半導體的厚度約爲100μ,但作爲設備製造商,以8英寸晶圓的生產爲標準,以提高生產效率爲目標。 在該生產過程中,晶圓的“彎曲”成爲重大問題,而“支撐器”可以應對這個問題。
公司預計到2025年3月MOSFET用的‘Supporter’需求將達到每年約1500個。它是與IGBT用一起令人期待的市場。雖然MOSFET用(8英寸用)的價格預計會低於IGBT用(12英寸用),但是我們公司認爲未來的營業收入有可能達到年收入2-3個百萬日元。
另外近年來我們也注意到了薄型IGBT市場的擴大。目前,最有需求的當然是EV汽車,但近年來還有風力發電,家電等其他領域的需求也在增長。
(作者:日經FISCO客座分析師 寺島昇)
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