■ヘリオス<4593>の開発パイプライン
3. HLCM051(脳梗塞治療薬)
脳梗塞は、脳の血管が詰まり、その先の細胞に栄養が届かなくなることで、脳の働きに障害が起きる疾患を指す。詰まった血管の部位により症状は異なるが、いったん発病すると命が助かったとしても、多くの場合、麻痺や言語障害などの後遺症が残る。同社決算説明資料によると、年間の発症者数は日本で33万人※、米国で69万人、欧州で84万人、中国で340万人となっており、全世界で526万人超と推計されている。
※ HLCM051の対象患者は発症後36時間以内に医療機関に運び込まれる患者となり、同条件に当てはめれば日本国内の対象患者数は6.2万人程度になると同社では推計している。
脳梗塞急性期の治療には、一般的に脳の血管に詰まった血の塊を溶かす「血栓溶解療法」や、閉塞した脳動脈内の血栓を直接回収する等で血流を再開させる「機械的血栓回収療法」が行われているが、「血栓溶解療法」の適応は発症後4.5時間以内、「機械的血栓回収療法」でも8時間以内に限定されている。このため脳梗塞発症後から一定時間が経過した後でも、治療に効果的な新薬の開発が強く望まれている。
HLCM051は、脳梗塞を発症してから36時間以内に静注投与することによって、免疫応答の場である脾臓(ひぞう)で炎症免疫細胞の活性化を抑制し、炎症や免疫反応を抑えて神経細胞の損傷を抑制、さらに抗炎症性細胞を増殖させ、栄養因子を放出することで神経保護作用の効果が期待される。
開発の進捗状況としては、同社が日本で第2/3相試験を実施し2022年11月に結果を発表したほか、2023年10月にアサシスが米国での第3相試験の中間解析結果を発表している。日本では脳梗塞発症から18~36時間以内の患者220人をHLCM051群とプラセボ群各110例に分けて投与後90日目及び365日目における改善度合いを比較した。主要評価項目として、ほぼ日常生活に支障がないと判断されるExcellent Outcomeの症例数を、また副次評価項目として日常生活で自立が可能な状態を指すGR(Global Recovery)の症例数や、基本的日常生活動作の状態を指数化したBI指数で95以上の症例数を比較した。結果として、主要評価項目については投与後90日、365日ともにプラセボ群に対する統計的有意差が認められなかったが、投与後365日のGR(p値=0.037)やBI指数(p値=0.045)については有意差が認められ、またHLCM051投与後の安全性も確認された。
今後の開発方針として、同社は日本と米国で実施された臨床試験のデータを統合してさらに解析を進め、より高い確度で製造販売承認の取得が可能な治験デザインを検討する意向を示している。ポイントとしては、投与後365日目のGRやBI指数などを主要評価項目として設定できるかにかかっている。一方、日本においては先駆け審査指定制度に認定されていることもあり、PMDAと協議したうえで有意差が得られた副次評価項目によって、条件及び期限付承認申請を目指す可能性もあるとしている。
米国での脳梗塞を対象とした開発については、ARDS治療薬の開発にリソースを集中するため、当面は優先順位を下げて臨むことになるが、市場規模はARDSよりも大きく、今後も高齢化社会の進展に伴い増加することが見込まれるだけに、将来的に開発が進むことを期待したい。臨床試験を行う場合の開発費用については、ARDS治療薬と同様に米子会社または新設する子会社にてロイヤリティ投資・第三者割当増資などにより調達する方針だ。なお、米国と日本以外の地域についてはライセンスアウトの方向であり、製薬企業からの問い合わせも入っているようだ。
外傷向けは米国防総省の予算で第2相臨床試験を実施中
4. HLCM051(外傷治療薬)
HLCM051は米国で外傷向け治療薬としての開発を、米国防総省とメモリアル・ハーマン基金がスポンサーとなって進めている。アサシスの経営破綻により第2相試験(組入れ患者数156人)が一時的に中断していたが、2024年10月より再開した。組入れ進捗率は2割程度のようで、2025年末までの終了を見込んでいる。良好な結果が得られれば、引き続き国防総省などがスポンサーとなって第3相臨床試験に進むことになる。同社が資金負担することはなく、開発に成功すれば米軍向けに大量導入される可能性もあり、今後の動向が注目される。
米国では交通事故や労働災害、銃創などによる外傷で死亡するケースが多く、同社決算説明資料によれば、45歳未満の死亡原因の第1位、全死亡原因の第3位、QOL(Quality of life)を低下させる原因の第1位となっている。年間死亡者数は22万人で、うち一般外傷が55%、薬物による影響下での外傷もしくは急性中毒が45%を占めている。外傷に起因する全身性炎症反応症候群を発症した場合、初めは体を防御する目的であっても、調節不可能なサイトカインストームとなり、大規模な炎症カスケードを引き起こし、腎不全などの臓器障害になることで死に至る。現在、こうした状況に至った患者に対する有効な治療薬はなく、それぞれの症状に応じて対処療法を行うのみとなっている。HLCM051を投与することで、サイトカインストームを抑え込み、患者の予後に効果があるものと期待されている。
第2相臨床試験では、外傷による多臓器不全/全身性炎症反応症候群を対象疾患とした二重盲検プラセボ対照比較試験を実施しており、主要評価項目として投与後30日の腎機能の改善状況をプラセボ群と比較する。また、副次評価項目として死亡率なども評価する。対象患者は入院後数時間以内の初期蘇生を経た重症の外傷疾患患者となる。開発に成功すれば、米軍が大量導入する可能性もあり、今後の動向が注目される。
eNK細胞によるがん免疫療法は2025年内の臨床試験開始を目指す
5. HLCN061(次世代がん免疫療法)
iPSC由来で遺伝子編集技術を用いて独自開発したeNK細胞を用いたがん免疫療法について、複数のアカデミアと共同研究を進めており、2025年内の臨床試験開始を目指している。
eNK細胞は、遺伝子編集技術によりNK細胞よりも腫瘍細胞の殺傷能力や腫瘍部位への浸潤能力を高めたことが特徴となっており、これまでの自社研究成果として、肺がん同所生着モデルマウス、肝がん皮下移植モデルマウス、胃がん腹膜播種モデルマウス、及び中皮腫皮下移植モデルマウスに対して抗腫瘍効果を有すること、生体におけるがんと同様の環境を有する肺がん患者由来のオルガノイド※においても同様に抗腫瘍効果があることを確認している。
※ 生体への組織・器官に極めて似た特徴を有している3次元的な構造を持つ組織・細胞。
共同研究プロジェクトでは、国立がん研究センターと同センターが保有する複数のがん種に由来するPDX(患者腫瘍組織移植片)移植マウスを用いてeNK細胞の抗腫瘍効果等の評価を進めているほか、広島大学大学院と肝細胞がん、兵庫医科大学と中皮腫に対するがん免疫療法の共同研究を進めており、2024年に入ってこれら研究成果が学会等でも発表されている。
なお、研究開発に関しては今後子会社のeNK Therapeuticsが主体となって進める予定であり、臨床試験などで開発費が必要となる場合には、ロイヤリティ投資や第三者割当増資などによって資金を調達する。資金調達によって年間10億円程度の開発費負担の軽減につながると同社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
■赫利奧斯<4593>的開發管線
3. HLCM051(腦梗塞治療藥物)
腦梗塞是指腦內的血管被堵塞,使得後續細胞無法獲得營養,從而導致腦功能障礙的一種疾病。因堵塞的血管部位不同,症狀各異,但一旦發病,即使性命得以保全,往往也會留下癱瘓或語言障礙等後遺症。根據公司業績說明資料,日本每年約有33萬人發病, 美國有69萬人,歐洲有84萬人,中國有340萬人,全球發病人數推算超過526萬人。
※HLCM051的對象患者爲發病後36小時內被送到醫療機構的患者,該公司估計在同樣條件下,日本國內的對象患者數約爲6.2萬人。
在腦梗塞急性期的治療中,通常採用溶解腦血管堵塞的血塊的「血栓溶解療法」,或通過直接回收閉塞的腦動脈內血栓等來恢復血流的「機械血栓回收療法」,但「血栓溶解療法」的適應症限制在發病後4.5小時以內,「機械血栓回收療法」也僅限於8小時以內。因此,在腦梗塞發病後一定時間過去後,強烈希望能開發出對治療有效的新藥。
HLCM051通過在腦梗塞發病後36小時內靜脈注射,可以抑制脾臟(脾臟)中炎症免疫細胞的活化,即抑制炎症和免疫反應,從而減輕神經細胞的損傷,並進一步促進抗炎細胞的增殖,釋放營養因子,實現神經保護的效果。
在開發進展方面,該公司在日本進行了2/3期試驗,並於2022年11月發佈了結果,此外,2023年10月,阿薩斯在美國發布了3期試驗的中期分析結果。在日本,將自腦梗塞發病後18至36小時內的220名患者分爲HLCM051組和安慰劑組各110例,於投藥90天及365天時比較改善程度。作爲主要評價指標,比較被判定爲幾乎不影響日常生活的優秀結果(Excellent Outcome)病例數;作爲次要評價指標,比較指日常生活自理能力的GR(全球恢復)病例數,以及基本日常生活活動狀態指數化的BI指數在95以上的病例數。結果顯示,主要評價指標在投藥後90天及365天均未發現與安慰劑組的統計顯著差異,但在投藥後365天的GR(p值=0.037)和BI指數(p值=0.045)方面顯示出顯著差異,HLCM051投藥後的安全性也得到了確認。
未來的開發方針是,該公司計劃整合在日本和美國進行的臨床試驗數據,進一步分析,以便以更高的確度考慮能夠獲得生產銷售批准的試驗設計。關鍵在於是否可以將投藥後365天的GR和BI指數等作爲主要評價指標。另一方面,由於在日本被認定爲先行審查指定製度,經過與PMDA協商後,有可能通過獲得顯著差異的次要評價指標,申請條件及期限的批准。
關於在美國開發針對腦梗塞的產品,由於需將資源集中於ARDS治療藥物的開發,短期內將優先級降低,但由於市場規模大於ARDS,預計隨着老齡化社會的發展將持續增加,因此希望未來能推進開發。進行臨床試驗的開發費用方面,計劃同樣通過美國子公司或新設子公司的特許權投資、第三方賦值增資等方式進行籌集。此外,除了美國和日本以外的地區將開展許可證外包,似乎也收到製藥企業的諮詢。
針對外傷的開發,正在使用美國國防部的預算進行第二階段臨床試驗。
4. HLCM051(外傷治療藥)
HLCM051正在美國開發爲外傷治療藥,贊助方爲美國國防部和紀念哈曼基金。由於Asahis的破產,第II期試驗(入組患者數156人)曾暫時中斷,但已於2024年10月重新開始。目前入組進度約爲20%,預計到2025年底結束。如果獲得良好結果,國防部等將繼續贊助進入第III期臨床試驗。該公司不需承擔資金負擔,若開發成功,將有可能大規模導入美軍,未來動態備受關注。
在美國,由於交通事故、職業災害和槍傷等造成的外傷死亡案例較多,根據該公司的財務說明資料,45歲以下的死亡原因排名第一,所有死亡原因中排名第三,減少生活質量(QOL)的原因排名第一。每年死亡人數爲22萬,其中一般外傷佔55%,藥物影響下的外傷或急性中毒佔45%。如果發生由外傷引起的全身性炎症反應綜合症,起初雖然是爲了保護身體,但會導致調節不當的細胞因子風暴,觸發大規模炎症級聯反應,導致腎衰竭等器官損傷而致死。目前尚無有效的藥物治療此類情況,僅能根據各自的症狀進行對症治療。預計通過HLCM051的投用,可以抑制細胞因子風暴,對患者的預後產生積極影響。
第II期臨床試驗中,針對外傷導致的多臟器衰竭/全身性炎症反應綜合症進行雙盲安慰劑對照比較試驗,其主要評價指標爲用藥後30天的腎功能改善情況與安慰劑組進行比較。同時,副次評價指標也將評估死亡率等。對象患者爲入院後數小時內經過初步復甦的重症外傷患者。如果開發成功,軍方有可能實現大量導入,未來動態備受關注。
eNK細胞的癌症免疫療法目標在2025年內啓動臨床試驗
5. HLCN061(下一代癌症免疫療法)
iPSC由來的基因編輯技術用於獨立開發的eNK細胞的癌症免疫療法,目前正在與多所學術機構進行合作研究,目標是在2025年底前啓動臨床試驗。
eNK細胞的特點在於通過基因編輯技術增強了比NK細胞更強的腫瘤細胞殺傷能力和對腫瘤部位的浸潤能力,作爲自家研究成果,已確認對肺癌同所移植模型小鼠、肝癌皮下移植模型小鼠、胃癌腹膜播種模型小鼠,以及中皮瘤皮下移植模型小鼠有抗腫瘤效果,並在具有與體內癌症相同環境的肺癌患者來源的類器官※中也顯示出抗腫瘤效果。
※ 具有與生物組織和器官極其相似特徵的三維結構的組織和細胞。
在合作研究項目中,除了使用國立癌症研究中心及其所擁有的多種癌症源的PDX(患者腫瘤組織移植片)移植小鼠評估eNK細胞的抗腫瘤效果外,還與廣島大學研究生院合作開展肝細胞癌和與兵庫醫科大學合作研究中皮瘤的癌症免疫療法,相關研究成果已於2024年在學術會議等中進行發表。
另外,在研究開發方面,未來子公司eNK Therapeutics將主導推進,若在臨床試驗等中需要開發費用,將通過版權投資或第三方賦值增資等途徑籌集資金。公司認爲,資金籌集將有助於減輕每年約10億日元的開發費用負擔。
(撰寫:FISCO客座分析師佐藤讓)