■中長期の成長戦略
1. 変化に対応できる企業体質への転換
冨士ダイス<6167>は新社長の下で「中期経営計画2026」を策定、前中期経営計画で最終年度が資源高や中国市場の停滞、自動車部品産業の回復の遅れなどで計画未達成となったことを踏まえ、新たに「変化に対応できる企業体質への転換」をコンセプトに掲げた。具体的には経営基盤の強化を図り、生産性向上・業務効率化、前中期経営計画で必ずしも思った成果が出せなかった海外事業の飛躍、また新規事業の確立を目指すとともに、昨今のテーマとなっている脱炭素・循環社会への貢献を重要施策として定めた。
「中期経営計画2026」の具体的な連結数値目標として最終年度の2027年3月期に、売上高200億円、営業利益20億円、経常利益率10.5%、ROE7.0%を掲げた。前中期経営計画ではフェーズ2として2027年3月期に売上高200億円、営業利益25億円、営業利益率12.5%を目指していたが、2024年3月期の業績内容を踏まえ、営業利益は5億円減額した。このように前中期経営計画のフェーズ2に対し利益の前提を引き下げたこともあり、従来以上に売上拡大にも増して利益達成重視の姿勢で臨むことを表明した。
今回の中期経営計画については、2024年3月期において収益悪化から前中期経営計画最終年度で未達成に終わったことを踏まえ、新社長の慎重な姿勢が伺え、最低限の目標数値とみられる。実際、利益については前期の熊本工場での一時費用、加えてLIB用金型の想定外の事態発生が利益の未達成要因であり、本来は限界利益率が高いビジネスを展開しており、売上高が戻れば急速に利益率向上が可能な企業体質となっている。まずは2025年3月期にイレギュラーな売上減少がない前提で売上総利益率は2023年3月期程度の利益率に戻ると考えられ、売上高が達成されれば利益は増額される期待がある。さらに2026年3月期に営業利益1,500百万円を達成し、2018年3月期の1,465百万円を抜いて営業利益で最高益更新できるかがポイントとなろうが、新製品効果などで十分クリア可能な数字と見られる。
以下では同社の中期経営計画主要項目について主に戦略分野中心に今後の方向性を見ていく。
2. 脱酸素・循環型社会への貢献
(1) 次世代自動車関連
同社は重要政策の中で脱炭素・循環型社会の形成に貢献する製品を積極的に開発・市場投入する方針であるが、とりわけ業容拡大においては最大需要先である自動車産業向けの対応が非常に重要となる。そのため二次電池、モーターコア、マグネット関連への注力を続けている。
二次電池ケース成形用金型では、足元でHEVの好調もあり需要は底打ちから回復に向かっている。同社は従来から角型対応は進めているが、円筒型については、今回の米国IRA法により痛手を被った。このため、今後は精密金型加工技術を生かし角形LIB用も本格的に手掛けていく。車載用角型LIBの市場は、トヨタ自動車<7203>(51%)とパナソニック ホールディングス<6752>(49%)が合弁会社として設立したプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(株)において拡張が進行中で2024年中に約7GWh/年の増産が始まる見通しで、改めて今後の拡大が期待される。
モーターコア用抜き金型では日系モーターコア製造メーカー各社向けに売上が拡大している。同市場は国内外に多くの競合が存在している。現在、用途としてはハイブリッド向けが多いが、今後EV向けの拡大を見据え、新材種VG48を投入した。EVではモーターの高出力化への要望に応じ積層数を拡大するために電磁鋼板の薄板化が必要となり、現在の0.2~0.3mmが採用され、同社では市場動向を見越した新材種開発も進んでいる。メーカーでは、積層方式が従来のカシメによるダボ積層から接着方式もしくは外装ダボ方式などで対応するなどの動きがある。また大口径化などで、高硬度電磁鋼板に対応する必要もある。高硬度電磁鋼板に対してはより摩耗しにくい金型素材が必要なほか、脆性が高いため衝撃で欠けやすく、高い耐ピッチ性が要求され、さらに金型に凝着しやすいため耐凝着性も必要とされる。同社が2022年8月にカタログ収載したVG48は従来品に対し破壊靭性や耐摩耗性に優れた長寿命化につながる新材種であり、複雑製品用の金型において放電加工による加工後でも材料強度が高く放電加工性にも優れている。今後メーカー認定が進めば大きく拡大が見込める。同社はモーターコア金型材種のラインナップを拡充することで、ユーザーの選択肢を増加させ、シェア拡大を図る。また昨今は日系以外の鉄鋼メーカーの電磁鋼板の製造ノウハウが高まっており、トヨタが宝武鉄鋼集団などの電磁鋼板を利用する動きなどもあり、中国ローカルメーカーに対し金型用素材の販売も強化する。
次世代自動車関連ではマグネットについて、車載用を中心にEVの本格拡大でネオジウム磁石を使った永久磁石同期モータの採用でネオジウム磁石需要の拡大が続く見通しだ。同社は粉末成形用金型、さらには海外向けに金型及び金型素材の供給を行っている。また最近はモーターコアとネオジウム磁石の一体成型技術が注目され、採用が増えている。これはモーターコアとネオジウムの隙間をなくすことで磁力線の漏れを最小に抑えることができ、また振動や騒音を大幅低減できるなどの様々な利点がある。このためEVの拡大とともに需要拡大が見込まれる。全体を通じ年率20%以上の成長が見込まれ、EV普及加速とともに売上拡大が加速することが予想される。
次世代自動車向けでは自動運転に関連して、高熱膨張・低比重硬質合金(TR合金)の中国市場での拡販に取り組んでいく。遠赤外線レンズ用の材料としてカルコゲナイドガラス※用金型母材としての用途を見込んでいた製品で、従来のガラスよりも高い熱膨張係数を持ち、温度変化にも敏感な素材に対し成形可能な母材が求められていた。具体的に従来のバインダーレス超硬合金では不可能な8MK-1を有し、ガラスの熱膨張係数に近づけることにより、離型時に硝材の噛み込みの抑制が可能となった。今後、自動運転などで多用されるADAS(先進運転支援システム)向けでLiDAR向けに採用の広がりが期待される。EV/PHEV販売台数世界トップのBYDでは高級EV車「HanEV」に前方3個、後方3個、計6個のLiDARを搭載している。中国ではレベル4の完全自動運転タクシーも2023年にサービスが開始され、一般車両でも運用が始まろうとしている。また諸外国でも実証実験が相次いでおり、本格的な生産拡大が期待される。なお同合金は車載だけでなく地上側の検知にも利用されると見られるほか、防犯監視カメラ向け赤外線レンズ用金型用途などにも利用されることから大径品対応も確立した。2024年から販売を始め、全体として大きく需要の伸びが期待される。
※遠赤外線を透過し物体を熱源として捉えることができる硝材で酸素の代わりにカルコゲン元素である硫黄、セレン、テルルなどを含むガラス。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
中長期的增長戰略
1. 轉向可以應對變化的企業結構
富士戴斯公司(FUJIDIESEL,6167)在新社長的領導下,制定了中期經營計劃2026。考慮到前期中期經營計劃中的資金緊張、中國市場的停滯和汽車零部件產業復甦的延遲等因素導致最終年度計劃未能達成,新制定了“轉向可以應對變化的企業結構”的概念。具體措施包括加強經營基礎,提高生產力和業務效率,跨越海洋業務的成果,確定新業務,以及使其成爲應對當今脫碳和循環社會主題的政策。
中期經營計劃2026具體的聯合數字目標是,在最終年度2027年3月期間,實現銷售額200億元,營業利潤20億元,經常性利潤率10.5%,ROE7.0%。在前期中期經營計劃中,作爲第2階段,其目標是在2027年3月期間實現200億元的營業收入,25億元的營業利潤和12.5%的營業利潤率。但考慮到2024年3月期的業績內容,營業利潤已減少5億元。正因爲如此,他們宣佈將更加重視實現收益而非僅僅擴大銷售額。
針對此次中期經營計劃,考慮到在2024年3月期末由於收益下降未能實現前一中期經營計劃,因此新任首席執行官的審慎態度使目標數字量最低。實際上,對於利潤而言,熊本工廠的一次性費用和意外的LIB模具事件是未達目標的原因。在行業中,其限制利潤率較高的業務,而且如果收入恢復,利潤率提高的速度將非常快。首先,假設在2025年3月期沒有異常的銷售下降,銷售毛利率將恢復到2023年3月期的水平。如果銷售額實現,那麼預計利潤將增加。此外,到2026年3月期爲止,完成營業利潤15億日元,可以超過2018年3月期的營業利潤1.465億日元並更新最高營業利潤的問題,但新產品效果等可以明顯突破數字。
下面重點關注該公司中期經營計劃的主要項目,主要集中在戰略領域中。
2. 爲脫碳和循環社會做出貢獻。
(1)下一代汽車相關
該公司的重要政策之一是積極開發和投入市場可以對脫碳和循環型社會形成貢獻的產品。但是,在擴大業務方面,特別重要的是適應汽車工業作爲最大需求者的需求。因此,該公司仍然專注於二次電池,電機核心和磁鐵相關方面。
在二次電池殼成型模具方面,由於目前HEV良好的形勢,需求正在從最低點恢復。該公司一直在推進對角形的適應,但對於圓筒形,受美國IRA法的影響很大。因此,在未來,將利用精密模具加工技術,全面投入到角形LIB部分。在汽車用角形LIB市場中,正在由豐田汽車(7203)(51%)和松下控股(6752)(49%)組建成的Prime Planet Energy & Solutions公司進行擴大生產約7GWh /年,並預計將於2024年開始。因此,期望在未來繼續擴大業務。
在生產日系電機芯廠家的模具中,銷售額正在擴大。該市場存在着許多國內外競爭對手。目前用途主要是混合動力,但爲了考慮到EV的擴大,新材料VG48已被投入使用。在EV中,爲了擴大電機的高功率要求,需要增加疊層數,因此需要將電磁鋼板厚度變薄,目前採用的是0.2~0.3mm,該公司還推出了新的材料。廠家正在通過採用新的粘合方式或外殼合頁等方法來應對以前的機械連接方式。此外,由於大口徑化,也需要適應高硬度電磁鋼板。對於高硬度電磁鋼板,需要更耐磨的模具材料,而且容易碎裂,需要具有更高的抗衝擊性,並且還需要具有耐吸附性才能滿足工作要求。VG48在該公司2022年8月的課程目錄中是一種新型材料,它不僅具有破壞韌性和耐磨性,而且能夠實現長期使用壽命和出色的放電加工性能。如果廠家得到認證,可以期待大規模擴大。該公司通過擴充電機芯模具的系列,增加用戶的選擇,並擴大市場份額。此外,最近日系以外的鋼鐵廠的電磁鋼板製造技術有所提高,豐田還開始使用寶武鋼鐵等電磁鋼板,爲中國當地廠家提供模具材料的銷售也在加強。
在下一代汽車領域中,磁鐵方面,以車載爲中心,隨着EV的真正擴大,可以預計將繼續擴大需求。該公司正在提供粉末成型用模具以及向海外提供模具和模具材料。近年來,一體成型技術已成爲電機芯和永久磁體的關注點,因爲它可以消除電機芯和磁體之間的間隙,從而將磁力線泄漏最小化,並且可以大幅降低振動和噪音等各種優點。因此,隨着EV的擴大,需求將進一步擴大。整體上,銷售額預計將以20%以上的年增長率增長,並且隨着EV的普及加速,銷售額增長將加速。
在未來的汽車中,針對自動駕駛,該公司正在推進TR合金(高熱膨脹,低重量,硬合金)在中國市場的擴大銷售。該產品被用作遠紅外線透鏡材料和特斯拉-玻璃用模具母材,但對於比傳統玻璃具有更高熱膨脹係數並對溫度變化較爲敏感的材料,需要具有成形性的母材。具體來說,它具有無法使用傳統無黏結鈷硬質合金的8MK-1,並且可以讓高硬度電磁鋼板接近玻璃的熱膨脹係數,從而使模具在脫模時能夠抑制硝材的咬合作用。將來,有望廣泛應用於ADAS(先進駕駛輔助系統)和LiDAR,在EV/PHEV的銷售數量位居世界前列的比亞迪(BYD)的高端EV車“HanEV”上,共搭載前3個和後3個,共6個LiDAR。在2023年中啓動了一款完全自動的級別爲4的出租車,也開始在普通車輛中進行運營。此外,在其他國家也有很多實證實驗,因此可以期待實際的生產擴大。此外,該合金不僅可用於高端EV中,還可用於地面探測等,可以確立大直徑產品的應用。預計從2024年開始銷售,全面增加需求增長。
※這是一種用於透射遠紅外線並將物體捕捉爲熱源的硝材,其含有硫、硒、碲等卡爾科根元素的玻璃,可以用作透鏡母材和某些模具母材。
(撰寫:富時客座分析師 岡本 弘)